7月26日にバンクーバー南部デルタ地方にあるEmma Lea Farmで、ブルーベリーを摘んだ。関西学院大学同窓会バンクーバー支部の毎年恒例の小旅行。今年の参加者は5人。もともとはもう少し多くなる予定だったが、都合が重なって、この人数に落ち着いた。だけど、それで何かが欠けたとは思わなかった。むしろ、その場にいた人たちとの時間が、より静かに濃く、沁みるように流れていった。 果樹園には、去年と変わらない空が広がっていた。広く静かな空の下にいると、それだけで少し心が整う気がする。けれどその空の下にいる人の数は、去年と違っていた。普段なら朝からにぎわうこの場所も、午前中は人がまばらだった。 やがて昼が近づくと、家族連れが少しずつ増えてきて、子どもたちが元気に走り回っていた。僕は本当はラズベリーかブラックベリーを摘みたかった。けれどこの日はブルーベリーだけの開放だったので、迷わずそちらに向かった。少し残念な気持ちを抱えながらも、目の前の実に集中する時間は、それはそれで悪くなかった。10パウンド以上摘まないと、正直グローサリーで買った方が安い。でも、摘みながら味見をして、大きくて甘い実だけを選んでいく体験には、それ以上の価値がある。歩いては立ち止まり、摘んではまた歩く。その単純な繰り返しの中で、久しぶりに会った先輩と他愛もない話を交わす。日常の輪郭が少しだけぼやけて、代わりに、柔らかい時間がそこに流れていた。 摘んだ実を手にすると、ただの果物とは少し違って見えた。それは、今日という一日のかたちをしているようにも感じられた。昼が近づくと、僕たちは日陰のピクニックテーブルに集まり、それぞれが持ってきた弁当を静かに広げた。食べながら、果樹園をすり抜けてくる風を、ほんのりと感じていた。また来年、どんな話をしながら実を摘んでいるのか、それも楽しみのひとつだ。



